この記事では、モンテッソーリ教育で大事な敏感期について、種類や時期を説明していきます。
☑ モンテッソーリ教育の「敏感期」
☑ 敏感期に子どもが発するサイン
☑ それぞれの敏感期に気をつけるポイント
☑ 敏感期の時期(年齢)
とっても大切な敏感期。
吸収力がめいっぱいある時期なのでできるだけ逃したくないですね!
この記事は長いので、目次か早見表から気になるところを選んで読むことを推奨します。
(もちろん全部読んでもらえると嬉しいですけど!)
敏感期とは
子が自らを成長させるものをみつけ
特別な興味と感受性を持つ時期のこと。
子どもを観察していると、「この子は今こんなことがやりたいんだな」「これに興味を持っているんだな」とわかることがあります。
例えば、1歳の子がご飯をぐちゃぐちゃと手でこねて遊んでしまう。
「ご飯は遊ぶものではないよ」と教えることも大切ではありますが、そもそもこの子はわざといたずらでしているのでしょうか?
そう、違いますよね。
「自分でできそう!」
「こうやったらどうなるのかな?」
そのような強い興味で行動しているのです。
この、子どもが自らを成長させるものをみつけ、特別な興味と感受性を持つ時期こそ、モンテッソーリ教育でいう『敏感期』です。
敏感期にいる子どもは、対象の事柄についてどんどん吸収し、伸びていきます。
そして、時期がすぎるとそのすさまじい吸収力は失われます。
『敏感期』の貴重な時期に気づいたら、危険でない限り、思う存分やらせてあげてほしいと思います。もしやらせてあげられないようなことであれば、同じような動きの代替品を与えてあげてください。
上の例で言うと、遊び食べをしたらご飯はさげてしまい、そのかわりに砂場や粘土のような手指を使う動きをあたえてあげるとよいですね。
(遊び食べがおうちの方のストレスになっていないのなら、食べ物がどうなるかしばらく試させてあげてもよいと思います。)
敏感期のサイン
集中しているか
繰り返しやっているか
敏感期を見抜くためには、この2つをよく観察してください。
敏感期の子どもは、自分で選んだ事柄に集中し、繰り返しやります。
特に、子どもの目に注目してみてください。
集中している子は、真剣できらきらした目をしています。
この2つに加えて「喜んでいること」という点をあげる方もいらっしゃいますが、個人的にはそこは重要でない気がします。
というのも、子によって表現はさまざま。うまくいかずに泣きながら何度も何度も挑戦し続け、やりきった!と満足いった途端にぷいっと興味をなくす子もいますから。
外から見て「嬉しそうか」よりも、「やりたがっているか」のほうを見てほしいなと思います。
敏感期に気づいたらどうすればいい?
モンテッソーリ教育においての大人の役割は決まっています。
観察とガイドです。
あくまで主役は子ども。
大人は、子どもが自発的にやりたくなる環境を整え、導いてあげるのが役目です。
さて、観察して「これは敏感期だな」と気づいたら、どうすればいいのでしょう。
正解は、『満足いくまでやらせてあげる』です。
これは私自身がやってしまっていたことですが、子どもが何かしているとつい「上手にできているね」「何を描いているの?」など声をかけたくなってしまうんですね。
せっかく集中しているのに、途切れさせてしまう行為でした。
声かけは、子どもが顔をあげてこちらを見たときで十分。きっと満足そうな顔をしていると思います。
もしうまくやれずに満足していない場合は、とてもゆっくり、やり方を見せてあげてください。(モンテッソーリ教育ではこれを『提示』といいます。)
また、満足いくまでやらせてあげるために、環境を整えるのも大人の役目です。
好奇心がわきでる環境を整える
集中できる環境を整え、満足いくまでやらせる
必要な場合は、ゆっくりとやりかたを見せる(提示)
年齢による敏感期の目安(早見表)
年齢による敏感期の目安を表にしてみました。
個人差がありますので、参考程度に考えてくださいね。
以下はそれぞれの項目をリンクしています。
読みたい項目をクリックしてください。
年齢(月齢) | 敏感期の種類 |
---|---|
~0才5か月 | 話しことば・感覚(前期)・運動(前期) |
0才6か月 | 話しことば・感覚(前期)・運動(前期)・秩序 |
1才 | 話しことば・感覚(前期)・運動(前期)・秩序 |
2才 | 話しことば・感覚(前期)・運動(前期)・秩序・小さい物・ |
3才 | 話しことば・感覚(前期)・運動(前期)・秩序・小さい物・礼儀作法 |
3才半 | 書きことば・感覚(後期)・運動(後期)・秩序・礼儀作法 |
4才 | 書きことば・感覚(後期)・運動(後期)・秩序・礼儀作法・数 ・(文化) |
5才 | 書きことば・感覚(後期)・運動(後期)・礼儀作法・数 ・(文化) |
6才 | 感覚(後期)・運動(後期)・礼儀作法・文化 |
言語の敏感期とは
モンテッソーリ教育において、言語を習得する順番はこのようになっています。
聞く → 話す → 書く → 読む
0~3才ごろの前期「聞く」・「話す」が、話しことば。
3~5才半ごろの後期「書く」・「読む」が、書きことばです。
そこから品詞の役割や文法へ進んでいきます。
話しことば(胎児・0~3才)
話しことばの敏感期は、胎児7カ月目からはじまります。お母さんのお腹の中にいるころから音を聞き取っているのですね。
そして生後2~3か月ごろには話しかける人の口元をじっと見て、自らもクーイング(あーうーなどの音を発する)を始めます。
1才ごろになると、意味をもって言葉を発しようとします。
その後は3歳ごろまで、2語文、3語文…と会話ができるようになっていきます。
話しことばの敏感期では、周りで発される言葉、特にコミュニケーションのための言語が重要になります。
はっきりとわかりやすく、たくさん話しかけてあげてください。
何を話しかければいいか迷われる方は『やっていることの実況中継』をしてみてください。
例:今おむつをかえているよ、これからお散歩に行くよ、風がふいているね…など
また、意味のあることばを話し出すころ、よく言い間違えをします。(幼児期特融でかわいいですよね)
無理に訂正せず、正しい言葉をさりげなく繰り返してあげて、自分で気づくのを待ってください。
例:「トウモコロシあげる」
→×「トウモコロシじゃないよ、トウモロコシだよ」
→〇「ありがとう、トウモロコシくれるんだね」
(※発達には個人差があります。必ずしもこの通り進むわけではありません。
ただし、耳の聞こえや目が合わない等、気になることがある場合は自治体の健診や発達相談センターなどで相談されることをおすすめします。)
口元をはっきりと、わかりやすく、たくさん話しかける。
絵本の読み聞かせもとてもよいです。
絵本についてはこちらの記事でおすすめをいくつか挙げていますので、よければご参考になさってください。
書きことば(3才半~5才半)
書きことばの敏感期は、3歳半から始まります。
早いと思われる方もいるかもしれませんが、クレヨンを持ってぐるぐると描くだけでも、書くことに関する興味がでているということなのです。
また、モンテッソーリ教育では「読む」より「書く」が先に訪れると考えます。
自由にかける紙やお子さんの手にあったサイズのクレヨンなどが、手の届く場所にあるといいですね。
書くためには見て知ることも大事ですから、絵本の読み聞かせも有効です。
「書く」・「読む」に好きなときに触れられる環境を用意してあげてほしいと思います。
絵本や絵カードなどで文字に興味を持ち、文字で表現する楽しみを知る。
好きなだけ文字に触れる・書ける環境を用意する。
いくつか教具のかわりに使えそうなものもご紹介しますね。
くもんのゆびなぞりカードは、砂文字版という教具にも似ており、何度でもなぞって楽しめるのでおすすめです。イラストもついているので絵カードとしての役割もあります。
くもんのひらがなさいころつみきは、イラストから文字を覚えるだけでなく、ひらがなを積み重ねて単語や自分の名前をつくったりと長く遊べる知育玩具です。
感覚の敏感期とは
ここでいう『感覚』とは、五感のことです。
視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚を使い、さまざまな刺激を受けていきます。
感覚の敏感期も、0~3才の前期と3~6才の後期にわかれています。
感覚の探求・ため込み(0~3才)
0~3才は、無意識に五感を使い、吸収していく時期です。
見たもの、聞いた音、匂い、味、感触など、すべてを溜め込みます。
モンテッソーリ教育では子どものサイズにあった『本物』を使うことが重視されますが、この時期の感覚の敏感期では特に本物であることが重要になってきます。
さまざまな質感の布に触らせてあげる。
本物の野菜を見たり嗅いだり触ったりする。
外に出て、風を感じ、葉や木の実に触れる。
そういう本物に触れる体験を、なるべく広い範囲で意識してやらせてあげられるとよいですね。
本物を通して、見る、聞く、触れる、嗅ぐ、味わう体験を。
整理・分類・秩序化(3~6才)
3歳をすぎた子どもは感覚器官が発達し、0~3歳の時期より踏み込んだ「感覚の敏感期」が訪れます。
これまで溜め込んできた感覚を、秩序立てて整理・分類し、理解しようとするのです。
たとえば、いろんな形を触るだけだったものが、大きい小さいがわかるようになります。
規則的に並んでいるもののなかでふと順番が違っていたりすると、目で見て違いを感じます。
同じ色や種類で分類したりするようになるのもこの頃の特徴です。
モンテッソーリ教具でよく目にするのは、この時期の感覚教具が多いように感じます。
たとえばピンクタワーや円柱さしなどです。
ですが、教具がなくてもやれることはあります。
お料理の手伝いなんかは最高ですね。
やり方を見て(視覚)、
お湯の湧く音や焼く音の違いを聞いて(聴覚)、
本物の食材に触れて(触覚)、
匂いをかぎ(嗅覚)、
味わう(味覚)。
五感をフルに使っていますね!
生活のなかで、大きさの違いや、仲間分け、順列などを意識しよう。
教具を使うようでしたら、一例としてこのようなものがあります。
運動の敏感期とは
幼児の『運動』は、体育的な運動ではなく、『動作』のことを指します。
運動の敏感期もまた、0~3才の前期と3~6才の後期にわかれています。
運動機能の発達(0~3才)
0~3才の運動では、粗大運動と微細運動があります。
粗大運動は、全身を使った大きな動きのこと。
ずりばい・ハイハイ・つかまり立ち・歩く…という動作を獲得していきます。
微細運動は、おもに手指の動きのこと。
にぎる・つかむ・落とす・たたく…などの動作です。
赤ちゃんが、ティッシュをひたすら引き出す時期があるというのは聞いたことがある方(もしくは実体験した方)も多いのではないでしょうか?
運動の敏感期は、このように一見するといたずらに見えるものが多いです。
ここでももちろん、満足いくまでやらせてあげてください。
敏感期の「やりたい!」という輝かしい意欲は、いずれ時期を過ぎると失われます。
今この時期に、「できた!」と納得するまで思う存分やり、獲得していくことが大事です。
とはいえ、やられて困ることもありますよね。そんな時にはどんな動きをしたがっているか見極めて、同じ動きの代替品を用意してあげてください。
もしも一生懸命になれる動きがみつからないという場合は、おうちの人が様々な動きを示し、実際にゆっくりとやって見せましょう。
どの敏感期でも、まずは周囲の人の動きをじっと見ることから始まります。
ひとつひとつの動きを納得するまでやらせてあげる。
発達の順番にそって、次のステップがあることを示す。
洗練された運動(3~6才)
3~6才になると、それまでため込んできた動きを調節し、より洗練したものにしていきます。
粗大運動であれば、「立つ」が「片足立ち」へ、「歩く」が「走る」へ、など、自分の体をうまく動かすことができるようになってきます。
微細運動であれば、ハサミという動作でも「まっすぐ切る」だけだったのが「線にそって切る」「曲線を切る」「切ったもので創作する」といった具合に、より細かい動作になります。
さて、ここでおうちの方に我慢してほしい言動があります。
「だめ!」や「危ないからやめなさい」と代わりにやってあげてしまうことです。
道路にとびだすなどの危険な行為や人を傷つけてしまう行為はしっかりと止めて教えなければいけません。
しかし、そうではない「ヒヤヒヤする」程度の挑戦は、ぜひ見守ってあげてほしいと思います。(これがなかなか難しいんですけどね)
挑戦を止めない。
もし可能であれば、おうちに平均台や鉄棒があると、安全な場所でどんどん挑戦ができますね。
秩序の敏感期とは(0才半~4才)
0才6か月~4才ごろに訪れる秩序の敏感期は、「いつもと同じ」へのこだわりの時期です。
いつもと同じ道じゃなきゃいや。
いつもと同じ場所に置いてほしい。
寝かしつけはいつもと同じママ(パパ)でないと泣く。
大人が一度言ったことを違えると我慢ならない。など。
「順番、習慣、場所、所有物」などにこだわります。
ちょっとした違いにも敏感になるので、大人は理由探しに苦労するかもしれませんね。
「あまりわがままに付き合っていたら将来よくないのでは?」と言われる方もいらっしゃいますが、大丈夫。時期が過ぎればこのこだわりは薄れてきます。
むしろこの時期は子どもとの信頼関係を作り、情緒を安定させるのによいチャンスです。
のちのちの教育やしつけにも大きく関わってきます。
子どものこだわりを、できるだけでいいので受け入れて、安心感を与えてあげてくださいね。
ただし、時期が過ぎてもこだわりが強いお子さんや、親が疲弊してしまう場合は、健診のときなどでも相談してみるのがよいかもしれません。
子どものこだわりを大事にし、安心感を与える。
小さい物への敏感期とは(2~3才)
2~3才で訪れる小さい物への敏感期とは、その名の通り小さい物に興味関心を持つ時期です。
たとえば、大人が「あとで掃除機かけるからもういいよ~」と言いたくなるような、小さなゴミを拾っては持ってくる。
外では、ほんの小さな虫をみつけて、じいっと見入っては「見て!」と報告する。
そんな、大人にとっては見過ごしてしまうような、ともすれば「そんなのいいからもう行くよ」と言ってしまいそうなものへの興味が出る敏感期です。
身の回りにある小さいものや自然への興味。
発見する喜び。
そんなものが育っていきます。
時間が許すならば、(子にとっては)大きな発見を受け入れ、一緒に楽しんでみてください。
小さいビーズなどに触るときは手指の訓練や、数への興味にもつながりますね。
子の発見を受け入れ、一緒に観察してみる。
礼儀作法の敏感期とは(3~6才)
3~6才ごろに訪れる礼儀作法の敏感期とは、社会で生きるうえでのルールを学ぶ時期です。
ちょうど幼稚園に入園し、他者と関わり、集団での生活や決まりを覚えていく年ですよね。
他の敏感期と同じく、周りをお手本として吸収していきます。
つまり、大人がまず挨拶をしたり、ありがとうを言ったりといったお手本を丁寧に毎日見せることが大切です。
それも大人に対してだけではありませんよ。自分の親が、子のお友だちにどう接するかというのも見ていますからね。
ところで、「モンテッソーリ教育とは」という記事のなかで少し書いたのですが、モンテッソーリ教育は平和教育です。
自分をしっかり持った子は、他者を思いやれる。
自分と他者を大事にできる子は、社会(コミュニティ)の大切さも知っている。
自分も他者も社会も尊重できる子が増えるということは、平和につながっていくということです。
礼儀作法の敏感期は、平和教育のキーともなる部分なのですね。
「周りの迷惑になるからやめよう」「周囲にあわせよう」ということではなく、自分・他者・社会を大切にする心を育てることだと思っています。
振る舞いのお手本を見られる環境を用意する。
自分も、他者も、社会も、尊重する。
数の敏感期とは(4~5才)
年少~年長の間、特に4~5才ごろに訪れることの多いのが数の敏感期です。
数をかぞえる、数字を読むといったことに興味を持ちます。
エレベーターに乗る機会があるなら、階数ボタンは興味の対象にうってつけですね。
数の敏感期では、まず『数の概念』に重点を置いてほしいと思います。
声に出して言う数 = 実際の数 = 数字(文字)
この3つが一致していてこそ、数を理解していると言えます。
積み木の数、おやつの数、階段の数…数字は生活のなかにたくさん散らばっていますね。
まずは実物を見ながら、「1、2、3…」とかぞえる。
そのあと、数字を書いて一致させてください。
実際の数量を体感する。
算数教具には、大きな数字に触れるためのものもたくさんあります。
ぜひ活用してみてください。
文化の敏感期とは(6~9才)
一番遅い時期に訪れる文化の敏感期とは、自分の周囲にあるものごとに興味を持つ時期です。
ここでいう『文化』は幅広く、乗り物や宇宙、生物、自然、芸術、音楽など、この世にあるあらゆるものが含まれます。
モンテッソーリの表では6~9才となっていますが、最近はもっと早くにその芽が現れることが多いように思います。
「どうして〇〇なの?」「なんでこうなるの?」という疑問・知りたいという意識が出てくるのが、文化の敏感期のサイン。
大人は、かならずしも「これは△△だからだよ」と答える必要はありません。
一緒に調べ、考える経験も大切だからです。
文化の敏感期は、自分の周囲にないことには興味を示しようがありません。
動物園に行くなど実際の体験から興味を持つことももちろん大事ですが、外出しにくいご時世でもあります。(執筆時2021年)
そこで、図鑑やさまざまな絵本を日ごろから目に入る場所に置いておくことをおすすめします。
「好き」の気持ちと、「どうして?」の疑問を大事に。
さいごに
子どもの興味を大切に
集中できる環境を整え、満足いくまでやらせる
大人は見本となる
以上、モンテッソーリ教育の敏感期に関する記事でした。
長い記事を目にとめていただき、ありがとうございました!